病院の検査結果で「糖尿病の疑いがあります」「あなたは糖尿病です」と医師から言われたとき、「自分はどのような種類の糖尿病なのか?」不安に感じる方も多いかと思います。
糖尿病は大きく「1型糖尿病」「2型糖尿病」「妊娠糖尿病」「その他の糖尿病」の4つに分けることができます。
このページでは、4種類の糖尿病について説明していきます。
糖尿病は原因を問わない
まず糖尿病の定義について説明します。「糖尿病」とは「慢性的に続く高血糖」のことです。
わかりやすく言うと「常に血液の中のブドウ糖の濃度が高い状態」のことです。
ここで一つ注意していただきたい点があります。それは、「高血糖の原因を問わない」ということです。原因が何であれ、慢性的に血糖値が高ければ「糖尿病」と診断されます。
つまり糖尿病とは、原因がいろいろある病気だということができます。
糖尿病は発症する原因によって分類される
そこで、糖尿病は発症した原因によって分類されます。つまり、「どのような原因で糖尿病になったのか?」で分類されるのです。
発症した原因によって「1型糖尿病」「2型糖尿病」「妊娠糖尿病」「その他の糖尿病」の4つに分類されます。
それではそれぞれの糖尿病について順番に説明していきます。
その前に、糖尿病の発症する原因を理解するために必要な、高血糖になってしまう仕組みについてまず説明します。
慢性的な高血糖を起こす2つの原因
慢性的な高血糖を引き起こす原因としては、主に2つのものが考えられています。それは、「インスリン分泌障害」と「インスリン抵抗性」です。
難しい言葉ですので順番に説明していきます。その前に、それぞれの言葉に出てくる「インスリン」について、説明します。
インスリンとは?
「血糖値」とは「血液の中のブドウ糖の濃度」のことです。通常、血液の中のブドウ糖の濃度は、一定の範囲内に収まるようにコントロールされています。血糖値が低すぎても高すぎても体に不調をきたします。
血糖値が高くなりすぎると、血液の中のブドウ糖を減らす「インスリン」というホルモンが膵臓から血液の中に分泌されます。
「ホルモン」とは「人間の臓器から血液の中に分泌され、血液により運ばれ、運ばれたそれぞれの組織で作用を引き起こす物質」のことです。非常に少ない量で、大きな作用を引き起こす力を持ちます。
「インスリン」は、血液の中にあるブドウ糖を肝臓や筋肉、脂肪細胞に取り込ませる働きをします。そのため、「インスリン」が分泌されると、血液の中のブドウ糖が少なくなり血糖値が下がります。
この仕組みを理解した上で、慢性的な高血糖を引き起こす原因である「インスリン分泌障害」と「インスリン抵抗性」の2つを順番に見ていきましょう。
インスリン分泌障害とは?
「インスリン分泌障害」とは、文字通り「膵臓からのインスリン分泌が障害されること」です。
正常な体では、血糖値が高くなると膵臓からインスリンが分泌され、血液の中のブドウ糖を肝臓、筋肉、脂肪組織に取り込んでくれるため、血糖値は下がり、正常範囲内に収まります。
しかし、インスリン分泌障害があると、血糖値が高くなっても、膵臓からインスリンが分泌されないため、血糖値の高い状態が続いてしまいます。
そのため、「インスリン分泌障害」は慢性的な高血糖の主な原因になります。
インスリン抵抗性とは?
慢性的な高血糖を起こす原因の2つ目が「インスリン抵抗性」です。
「インスリン抵抗性」とは「組織におけるインスリンの感受性が低くなり、インスリンが効きにくくなっている状態」です。
具体的に言うと、「筋肉」でインスリン抵抗性が高まってしまうと、筋肉にインスリンが作用しても、血液の中から筋肉の中にブドウ糖が取り込まれにくくなってしまいます。
つまり、正常時と同じ量のインスリンが分泌されても、筋肉の中にブドウ糖が取り込まれないため、正常時に比べて血糖値が下がらないのです。
「肝臓」でインスリン抵抗性が高まってしまうと、血液から肝臓内へのブドウ糖の取り込みが減ってしまいます。
またインスリン抵抗性が高まると、肝臓内でブドウ糖をまとめてグリコーゲンという塊にする機能が抑制されてしまうため、肝臓内のブドウ糖が増えてしまい、肝臓から血液の中にブドウ糖が放出されてしまいます。
その結果、肝臓でのインスリン抵抗性が高まってしまうと、慢性的な高血糖になる原因となってしまいます。
それでは、「インスリン分泌障害」と「インスリン抵抗性」についてわかっていただけだと思いますので、本題である糖尿病の分類について説明していきます。
タイプ①:1型糖尿病
「1型糖尿病」はインスリンを分泌している膵臓のβ細胞が、自分の免疫によって破壊されてしまうことが原因です。β細胞が破壊されてしまうことで、インスリンの分泌が低下していき、インスリン分泌障害を引き起こします。
特定の遺伝子を持つ人は、β細胞を自分の免疫で破壊してしまう確率が高いことがわかっています。
また、1型糖尿病では、ウイルスなどの感染が引き金となり、免疫によるβ細胞への破壊が始まります。
特徴としては、小児から思春期の発症が多く、全糖尿病に占める割合は5%以下です。
インスリンを分泌するβ細胞が破壊されて行き、インスリンが出なくなってしまうため、生きてゆくためにインスリン注射が必要になります。
タイプ②:2型糖尿病
2つ目が「2型糖尿病」です。
「2型糖尿病」の原因は、「インスリン分泌障害やインスリン抵抗性に関連する遺伝子」と、「過食や運動不足による肥満」です。
「2型糖尿病」は遺伝との関わりが強いと言われていますが、生活習慣などの要因が加わって発症します。
中高年での発症が多く、日本の全糖尿病患者の9割を、「2型糖尿病」が占めています。インスリン分泌低下とインスリン抵抗性が増大することにより、インスリン作用不足が起こり発症します。
1型糖尿病とは異なり、β細胞の機能はある程度保たれているため、インスリン注射が必要になることは稀です。食事療法や運動療法、内服薬などにより治療が行われます。
タイプ③:妊娠糖尿病
3つ目が「妊娠糖尿病」です。
「妊娠糖尿病」の定義は「妊娠中に初めて発見または発症した糖尿病に至っていない糖代謝異常」です。
非常に難しい表現ですので、わかりやすく説明します。
つまり、糖尿病ほどの高い血糖値ではないが、正常値よりも高い血糖値の妊婦さんのことです。
妊婦さんでも、通常の糖尿病の診断基準を満たす高血糖であれば「妊娠糖尿病」ではなく、「2型糖尿病」になります。
なぜ糖尿病の診断基準よりも低い血糖値なのに「妊娠糖尿病」と呼ばれるのでしょうか?理由は三つあります。
まず妊娠自体が高血糖を引き起こす引き金となってしまうこと。また、妊娠中は、軽い高血糖状態でも母親と胎児に大きな影響を与えやすいこと。そして3つ目が、妊娠中に高血糖であると、将来糖尿病を発症する危険が大きくなるからです。
そのため妊娠中の高血糖は、通常の糖尿病とは分けて考え、妊娠糖尿病として治療することになります。
タイプ④:その他の糖尿病
4つ目が「その他の糖尿病」になります。このグループの糖尿病には様々な原因があります。
膵臓のβ細胞の機能に関わる遺伝子の異常、インスリンの作用の仕組みに関わる遺伝子の異常といった「遺伝子異常」が挙げられます。
また、膵臓の病気、内分泌系の病気、肝臓の病気、感染症などの「病気」が原因となるものもあります。
さらに、「薬剤」や「化学物質」が原因となり、引き起こされる糖尿病も含まれます。
前述したように、日本人の糖尿病の9割が2型糖尿病です。
多くの方が、医師から糖尿病と言われた場合、2型糖尿病であるパターンがほとんどです。2型糖尿病以外の糖尿病のケースでは、医師からどの種類の糖尿病であるか説明を受けることになります。
2型糖尿病では、遺伝も関わりがあると言われていますが、その発症には過食や運動不足と言った生活習慣が大きく関わっています。
すなわち、日本人のほとんどの糖尿病患者では、運動や食事といった生活習慣を見直していくことが非常に大切です。