血液検査の結果が出て、「このままでは糖尿病になってしまいますよ」「糖尿病の可能性があるので再検査をしましょう」と医師から言われたことのある人も多いかと思います。
しかし、「糖尿病」という名前は聞いたことがあるが、「一体どのような病気なのか?」を理解している方は少ないのではないでしょうか?
糖尿病とは一言でいうと「慢性の高血糖となる疾患」です。もう少し簡単に言うと「常に血液中のブドウ糖という糖質の濃度(濃さ)が高い状態のこと」です。
つまり「糖尿病」とは、「いつも血液の中にブドウ糖がたくさんある状態」のことです。
では、なぜ「いつも血液の中にブドウ糖がたくさんある」と痛くも痒くもないのに病気だと診断されるのでしょうか?
順番に説明していきます。
血糖値が高いとどうなってしまうのか?
まず、言葉の定義について説明します。
糖尿病でよく使われる言葉に「血糖値」があります。「血糖値」とは「血液の中のブドウ糖の濃度(濃さ)」のことです。
また「高血糖」とは、「血液の中にブドウ糖がたくさんある状態」です。
「高血糖」となっても、初めのうちはほとんど自覚症状がありません。そのために多くの人が、そのまま治療せずに放置してしまいます。その結果、「常に高血糖の状態」が続くと、全身の血管や神経は障害を受けてボロボロになっていきます。
例えば、細い血管がボロボロになると、目では「網膜症」、腎臓では「腎症」になります。また、神経がボロボロになると「神経障害」になり、太い血管がボロボロになると「虚血性心疾患」「脳梗塞」「閉塞性動脈硬化症」といった病気を引き起こします。
このような「高血糖の状態が引き起こす病気」のことを「合併症」といいます。「合併症」により「失明」「透析」「足の切断」「命を落とす」ことがあります。そのために糖尿病は、恐ろしい病気だと言われているのです。
それでは、主な合併症にどのようなものがあるのか見ていきましょう。
怖い三大合併症(失明・透析・足の切断)
まず主な合併症に「三大合併症」があります。具体的には「糖尿病網膜症」「糖尿病腎症」「糖尿病神経障害」の3つです。これらは、細い血管や神経が高血糖により障害を受けることで発症します。
まず1つ目の「糖尿病網膜症」とは、高血糖により目の網膜というところの細い血管がもろくなり、血管がこぶを作ったり出血したりする病気です。悪化すると失明することがあります。日本の失明の原因の第2が糖尿病網膜症によるものです。
2つ目が「糖尿病腎症」です。
腎臓は血液の中の老廃物をろ過して尿を作る臓器です。腎臓のろ過を担当している部位が「糸球体」というところです。「糸球体」とは文字通り、糸のような非常に細い血管が集まってできている組織です。
「糖尿病腎症」とは、糸球体の細い血管が高血糖により障害を受けてしまうために、正常にろ過ができなくなってしまう病気のことです。
進行してしまうと、「慢性腎不全」という腎臓が機能しなくなってしまう病気になります。さらに悪化すると、自分の腎臓ではろ過ができなくなり、人工透析や腎臓移植をしなくてはならなくなります。
なぜなら、腎臓でろ過ができなくなると、体内には有害な老廃物がたまり、人間は生きていくことができないからです。そのため、人工透析により血液をろ過しなくてはいけないのです。
透析になると、週4日1日5時間ほどベッドで横になっていなくてはなりません。そのため、今までと同じような生活を送ることは難しくなります。ちなみに、日本で新たに透析をすることになる患者の原因疾患の1位が糖尿病腎症です。
3つ目が「糖尿病神経障害」です。
高血糖が続くと、神経細胞の化学反応が障害されたり、神経細胞に栄養を送っている血管が障害を受けたりします。そのために神経細胞が正常に働かなくなります。
初めのうちは、しびれなどの症状が足に出ます。進行すると足の感覚がなくなってきます。そのため、けがや火傷をしても気づかないことがあります。
さらに進行すると感染症などになり、足に潰瘍ができたり、腐ったりします。足が腐ってきてしまうと、壊疽の拡大を防ぐために足を切断することになります。
命にかかわる大血管障害
次に太い血管である「動脈」が高血糖により障害を受けることで起こる合併症について説明します。「動脈」とは「心臓から体のいろいろな組織に酸素や栄養を送る血管」です。
主なものに「虚血性心疾患」「脳梗塞」「閉塞性動脈硬化症」の3つがあります。
はじめに、「太い血管が高血糖によりどのように障害を受けるのか」を説明します。
「高血糖」に「肥満」「高脂血症」「高血圧」などが加わると、「動脈硬化」が発症し進行をしやすくなります。「動脈硬化」とは「動脈の内側の壁が柔軟性を失って硬くなってしまうこと」です。
動脈を水道管に例えるなら、水道管の内側にサビがつき流れにくくなっている状態です。血液の通り道が狭くなっており、血管の内側の壁がボロボロで弱い状態になっています。
「高血糖」「高脂血症」「高血圧」「肥満」があると、動脈硬化を起こしている血管の内側の壁に「プラーク」という塊が増えて大きくなっていくことが知られています。
例えると、狭くなった血管の内側の壁に、コブができて大きくなっていくようなものです。血管の内側の壁からお餅が膨れ上がるような感じです。
このプラークが、膨れ上がり突然破裂すると、血の塊ができてしまい、血の流れをせき止めてしまいます。詰まってしまった血管の先の細胞には、血液が届かなくなってしまいます。血液が届かなくなってしまった細胞は、酸素と栄養素が届かないため死んでしまいます。
この現象が、脳の血管で起これば「脳梗塞」になり、心臓に栄養を送っている「冠動脈」という血管で起これば「心筋梗塞」になります。「心筋梗塞」により壊死した心臓の細胞が生き返ることはありません。「脳梗塞」も「心筋梗塞」も命に関わる病気であり、命が助かったとしても、後遺症が起こることがある非常に怖い病気です。
3番目が「閉塞性動脈硬化症」です。「閉塞性動脈硬化症」は「足に血液を送っている動脈が詰まってしまう病気」です。
慢性的に足に流れる血液が不足しているため、初めは冷感やしびれ感を感じます。進行するとじっとしているだけでも痛みを感じるようになります。
さらに悪化していくと足に潰瘍ができ、最終的には足が腐ってしまいます。その結果、足を切断しなくてはならなくなってしまいます。
その他の合併症
その他にも、糖尿病の患者では、「認知症」「悪性腫瘍(がん)」「骨粗しょう症」の発症リスクが上がることがわかっています。
以上をまとめると、「糖尿病」とは「血液の中のブドウ糖の量が多い自覚症状のない病気だが、進行してしまうと様々な病気を引き起こし、失明、透析、足の切断、脳梗塞、心筋梗塞などで命を落とす可能性のある病気」だと言えます。
ぜひ糖尿病について理解を深めていただき、日頃の食生活に気をつけ、早期に治療を開始し、取り返しのつかないことにならないよう注意しましょう。