「今度受ける健康診断で糖尿病に引っ掛かると大変だから、2~3日食事を控えて、血液検査の値を良くしよう」と考えている方も多いことでしょう。
しかし、検査前の2~3日間、食事を控えても、健康診断で血液検査を受けると、普段の血糖値が高いことが、簡単にバレてしまいます。
「空腹時血糖値が低いのに、何で再検査なんだろう?」と頭をかしげている方も多いのではないでしょうか。
普段の高血糖がばれてしまった原因は、「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」という検査項目が高かったからです。
あなたの普段の食生活の不摂生を暴露してしまうこの「HbA1c」について、今回は説明していきます。
HbA1cとは?
HbA1cとは「赤血球に含まれるヘモグロビンと血液中のブドウ糖がくっついたもの」です。
赤血球とは血液の中の成分で酸素を体の組織に送る働きをしています。血液の中をまるでタクシーのように、酸素や二酸化炭素を乗せて、必要な組織に運ぶ働きをしています。中央の凹んだ円盤のような形をしています。
赤血球が赤色をしているため、血は赤く見えます。血を顕微鏡で見ると、たくさんの赤血球を見ることができます。
血液1μL(0.001mL)中に、赤血球は成人男性では370万~570万個、成人女性では370万個~490万個も存在しています。
さらに細かく見ると、赤血球の中のヘモグロビンというタンパク質が、酸素とくっつき、酸素を運んでいます。
ヘモグロビンはブドウ糖とくっつきやすいため、血液の中のブドウ糖が多いと、ヘモグロビンとブドウ糖がくっついてしまいます。一度くっついたブドウ糖は、ヘモグロビンから離れません。
血中のブドウ糖の量が多いと、ブドウ糖とくっついてしまうヘモグロビンの数も増えます。例えるならば、赤血球をブドウ糖のシロップで糖漬けにするようなものです。濃いブドウ糖のシロップに赤血球をつけたほうが、ブドウ糖とくっついたヘモグロビンの数は増えます。
つまり、ブドウ糖とヘモグロビンがくっついてできたHbA1cの数が多ければ多いほど、血糖値が高いことがわかります。
HbA1cで何がわかるのか?
健康診断で測定されるHbA1cの数値(%)は「ブドウ糖と結合したヘモグロビン(HbA1c)の量が、血液中のヘモグロビン全体に占める割合」を表しています。
例えば、ヘモグロビン100個中、6個のヘモグロビンがブドウ糖とくっついていれば、HbA1cが6%ということになります。
ヘモグロビンに一度くっついたブドウ糖は、離れません。また、赤血球には寿命があります。脊髄で生まれた赤血球の寿命は約4ヶ月です。
このことより、HbA1c の値は「過去1~2ヶ月間の血糖値の平均」を示します。
空腹時血糖値とHbA1cの違い
血糖値は時間とともに、変化しています。特に食事の影響をすぐに受けますので、空腹時と食後では血糖値は大きく違います。健康診断の前日の夜から、食事をとってはいけない理由は、「空腹時血糖」を測るためです。ちなみに空腹時とは「9時間以上、絶食した後の状態」のことです。
健康診断では、主に「空腹時血糖値」と「HbA1c」が測定されます。なぜ2つの数値を測定するのでしょうか?
「空腹時血糖値」は、ある日の一時点での血糖値を表しています。一方、「HbA1c」は慢性的な高血糖を調べるために測定しているのです。
健康診断前の1週間、食事を減らし、運動を一生懸命すれば「空腹時血糖値」を下げることは可能です。しかし、検査前1~2ヶ月の血糖値の平均値を表す「HbA1c」の値をごまかすことはできません。
どんなに検査直前に策を弄しても、医師は HbA1cの数値を見ることで、患者の食生活の乱れを知ることができるのです。
HbA1cは6.5%以上で「糖尿病型」
それでは、HbA1c の値が何%以上だと糖尿病なのでしょうか?
HbA1c の値が6.5%以上だと糖尿病の可能性が高い「糖尿病型」と診断されます。
実は HbA1c が高いだけでは、「糖尿病」とは診断されません。なぜなら、HbA1c は貧血や肝疾患のある場合、数値が変動する可能性があるからです。
HbA1c が6.5%以上で血糖値が正常の場合、1ヶ月以内に血糖値の再検査が行われます。血糖値を必ず測定して、血糖値と HbA1c の両方が糖尿病型であることを確認して初めて糖尿病と診断されます。
血糖値には「空腹時血糖値」「随時血糖値」「ブドウ糖負荷後2時間値」の3種類の検査があります。
「空腹時血糖値」は、絶食9時間以上での血糖値、「ブドウ糖負荷後2時間値」は、空腹時血糖値を測定後、ブドウ糖75グラムを溶かした水を飲んだ2時間後の血糖値、「随時血糖値」は絶食などをせずに測定する食事に関係のない血糖値のことです。
それぞれ、空腹時血糖値は126mg/dL以上、随時血糖値は200mg/dL以上、ブドウ糖負後2時間値は200mg/dL以上を「糖尿病型」と判断します。
HbA1c と3種類の血糖値のいずれかが両方とも「糖尿病型」の場合に「糖尿病」と診断されます。
ちなみに HbA1c の正常範囲は4.6~6.2%です。6.5%未満であっても、6.2%を超えている人は、注意が必要です。
HbA1cを下げるには食事療法と運動療法とサプリメント
前述したように、HbA1c は血糖値が高いと増えてしまいます。そのため HbA1c の値を下げるためには、血糖値を低くすることが唯一の対策になります。
まずは血糖値を上げない食事をすることです。血糖値を上げるのは糖質だけであることが分かっていますので、消化されて糖質になる「炭水化物」を減らすことが効果的です。
また、運動をすると血中のブドウ糖を筋肉が取り込み、消費してくれます。習慣的に運動することで、筋肉がブドウ糖を取り込みやすくなります。その結果、血糖値を下げることができます。
食事と運動に気をつけることで血糖値が下がることは、ほとんどの方がいると思います。わかってはいても、実行することが難しいのがこの2つです。
最近では、科学的に効果が検証されたサプリメントも発売されています。これらを上手に取り入れることで、血糖値を上げないようにしていくことが、より容易にできるようになっています。
食事療法、運動療法、サプリメントの3つを上手に活用して、HbA1c の値を下げることが、糖尿病を悪化させないためには重要です。