健康診断などで血液検査などの結果が渡されると自分が糖尿病なのかどうか? 不安に感じる方も多いかと思います。
数ある検査項目の中で、「血糖値」「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」の2つを見れば糖尿病かどうか判断できます。
このページでは検査値と糖尿病の診断基準について説明していきます。
糖尿病とは?
そもそも糖尿病とは、慢性的な高血糖状態のことをいいます。つまり、糖尿病は「慢性的に血液の中のブドウ糖の濃度が高い状態」のことです。
そのため糖尿病と診断するには、2つの基準を満たさなければいけません。その2つとは「実際に高血糖であること」と「高血糖状態が慢性的であること」です。
1つ目の基準である「高血糖」は、一時的にでも血糖値が高い状態があるのかどうかを判定します。つまり採血した時間の血糖値が高いのが低いのかを判断します。
この高血糖を診断するために「血糖値」という検査値が使用されます。
一方、慢性的かどうか? を判定するためには、「HbA1c」が基準値として使用されます。
血糖値と HbA1cを測定し、両方とも基準値よりも高かった場合に、「糖尿病」と診断されます。ちなみに、片方の値だけが基準値よりも高い場合は、「糖尿病型」と診断され、1ヶ月以内に再検査が行われます。
それでは血糖値と HbA1c について順番に説明していきます。
血糖値の一日の変動
血糖値と HbA1c を説明する前に、「血糖値」に着いて説明します。
血糖値とは血液の中のブドウ糖の濃度のことです。
人は食事をすると、食べ物を消化し吸収することでブドウ糖を血液内に取り込みます。そのため健康な人では、食後30分から1時間後に、血糖値は最高値になります。その後、血糖値は下がって通常の値に戻ります。
なぜなら、血糖値が高くなるとすい臓からインスリンというホルモンが分泌されて、血糖値を下げてくれるからです。しかし糖尿病の人は、インスリンの分泌が減っているため、なかなか血糖値が下がらず、食後2から3時間後に最高値になる人もいます。
血糖値は低くても高すぎても体に害をおよぼします。そのため、健康な人の体では、血糖値が70~140mg/dLの範囲内に収まるようにコントロールされています。逆にいうと、このコントロールができない方が糖尿病ということになります。
上述したように、人の体では1日の間に、血糖値は一定の範囲内で波のように動いています。そのため、どの時間帯に血糖値を測定したのか? により、診断基準に使う血糖値の種類が異なります。
血糖値の検査には3種類ある
空腹時血糖
まず1番目が空腹時血糖です。多くの方が健康診断の前日の夜から、食事はしないようにと指示を受けたことがあるでしょう。これは空腹時血糖測定するためなのです。
空腹時血糖の定義は、「食事から10時間以上あけて測定する血液中のブドウ糖の濃度」です。10時間絶食することで、1日の中で最も血糖値の低い時間の血糖値を知ることができます。
空腹時血糖値の正常値は70~110mg/dL未満です。126mg/dL以上だと「糖尿病型」と診断されます。糖尿病型とは、糖尿病の診断基準である「高血糖」と「慢性」のうち、片方を満たしている状態のことです。
ちなみに、空腹時血糖値が110~12mg/dL未満のことを正常高値と呼びます。
ブドウ糖負荷試験2時間値(75gOGTT2時間値)
2番目の検査値がブドウ糖負荷試験2時間値です。ブドウ糖負荷試験2時間値とは、「75グラムのブドウ糖を溶かした液を空腹時に飲んだ2時間後の血糖値」です。
健康な人では、直後に時間後には血糖値が正常値に下がるようにインスリンによってコントロールされています。2時間後の血糖値が200mg/dL以上の場合、糖尿病型になります。
ブドウ糖負荷試験2時間値の正常型は140mg/dL未満、境界型は140~200mg/dL未満です。
随時血糖値
3番目が随時血糖値です。随時血糖値は食事とは関係なく測定した血糖値のことです。食事を取ってからの時間に関係なく、診断の基準とできる検査値になります。
病院などの通院中、毎回食事を抜いて通院するのは大変なので随時血糖値が使われます。随時血糖値は200mg/dL以上で糖尿病型と判定されます。
HbA1c とは?
糖尿病の診断基準である「高血糖状態が慢性的であるかどうか?」を判定するのに使われる値が HbA1c です。読み方は「ヘモグロビンエーワンシー」です。
まずヘモグロビンについて説明します。血液の中には、肺から取り入れた酸素を体の様々な組織に運ぶ仕事をしている赤血球という円盤型の成分があります。この赤血球の中に大量に存在するたんぱく質がヘモグロビンです。
血糖値が高ければ高いほど、血液中のブドウ糖の数が増えるので、ヘモグロビンにブドウ糖がくっつきやすくなります。例えると、絵の具を水に溶かした液に白い紙を入れる場合、絵の具の濃度が高い液に入れた紙の方が濃く染まるのと同じことです。
ブドウ糖がくっついてしまったヘモグロビンのことを「糖化ヘモグロビン」といいます。そして、HbA1c は「全ヘモグロビンの内、何%が糖化ヘモグロビンになっているかを%で表した値」です。
また、 HbA1c は、直近2ヶ月間の平均血糖値を反映しています。では、なぜ2ヶ月間の平均値を反映しているのでしょうか?
まずヘモグロビンが存在している赤血球の寿命が120日間であるということです。
ヘモグロビンとブドウ糖は、出会った初めのうちは、くっついたり離れたりできます。しかし1、2ヶ月すると、がっちりとくっついてしまい、二度と離れなくなってしまいます。
血液中のブドウ糖の数が多ければ多いほど、ブドウ糖とくっつくヘモグロビンの数も増えますので、HbA1c の値が高ければ、直近2ヶ月間の血糖値の平均値が高いということがわかります。
また HbA1cの値と、糖尿病合併症の発現頻度は非常によく関係していることがわかっています。
ちなみに HbA1c が6.5%以上だと糖尿病型になります。正常値は4.6~6.2%です。
実際の糖尿病の診断基準
以上で述べてきたように、糖尿病の診断には、「実際に高血糖であること」「高血糖状態が慢性的であること」の2つを満たすことが必要です。
そして、高血糖かどうかを判定するために、空腹時血糖、ブドウ糖負荷試験2時間値、随時血糖値が使われること、高血糖状態が慢性的かどうかを判定するために、HbA1cが使われることがわかっていただけたと思います。
最後に具体的な、基準値をまとめます。
空腹時血糖値が126mg/dL以上、ブドウ糖負荷試験2時間値が200mg/dL以上、随時血糖値が200mg/dL以上のいずれかを満たし、なおかつ、 HbA1cが6.5%以上である場合、糖尿病と診断されます。
つまり血糖値と HbA1c を見れば、あなたが糖尿病かどうかは判断できるのです。