今までは健康診断を受けても血糖値は正常だったのに、50歳を超えてから血糖値が上がってきてしまい、どうしてよいか不安に思っている方も多いかと思います。
薬局で薬剤師として働いている私は、「自分は糖尿病とは縁がないと思っていたのに、急に血糖値が上がってきてしまい、どうしたらよいのでしょうか?」という質問をよく受けます。このような50代60代の糖尿病予備軍の方に、私は糖質の吸収を穏やかにするタイプでビタミンやミネラルなど多く含んでいるサプリメントを飲むようにお勧めしています。
なぜこのタイプのサプリメントをお勧めするのかについて、このページでは説明していきます。
血糖値を下げるサプリメントには2タイプあります
本題に入る前に、血糖値を下げるサプリメントにはどのようなものがあるのか、説明いたします。
市場にはたくさんのサプリメントが発売されています。しかし、大きく分けると糖質の吸収を穏やかにするものと、糖質の体内での燃焼を促進するものの2つのタイプに分けられます。
糖質の吸収を穏やかにするサプリメントは、サラシナや食物繊維があります。サラシナは腸内で糖質が分解されるのを阻止します。そのため、体は、糖質の塊を腸から吸収することのできる大きさにまで小さくすることができません。その結果、腸から血液の中に糖質を吸収するのを穏やかにしてくれます。
食物繊維は、腸の壁から糖質が吸収されるのをブロックすることで、吸収される速度を遅くしてくれます。
一方、糖質の燃焼を促す系のサプリメントにはALA(5-アミノレブリン酸リン酸塩)というアミノ酸があります。細胞内に吸収された糖質を燃焼させてエネルギーに変えるのを促します。
50代60代で初めて血糖値が上がり始めた方には、「糖質の吸収を穏やかにするタイプ」のサプリメントで、かつビタミンやミネラルなどが豊富に含まれているものをおすすめします。
糖質の吸収を穏やかにするサプリメントを勧める2つ理由
理由①:すい臓の疲弊を改善することができるから
糖尿病予備軍の方は、まだすい臓のインスリンを分泌する機能がそれほど失われていません。どういうことかというと、日本人が糖尿病を発症する主な原因は、高い血糖値を下げようとしてすい臓が頑張りすぎた結果、すい臓が疲れきってしまい、インスリンという血糖値を下げるホルモンを出せなくなってしまうことです。
血糖値が高い状態のまま、年齢を重ねていくと徐々にすい臓が疲弊していき、ある日突然、糖尿病と診断されます。一度糖尿病になってしまうと治すことはできません。
しかし、空腹時血糖値が110~125mg/dLの糖尿病予備軍の方は、すい臓にかかる負担を減らせばすい臓のインスリン分泌機能を正常に戻すことができます。なぜ糖質な吸収を穏やかにすると、すい臓の疲弊を改善することができるのでしょうか?
食事をして血液の中の糖質が増えると、すい臓からインスリンという血糖値を下げるホルモンが分泌されます。健康な人の体では、この機能がスムーズに働くため、食後でも血糖値が200mg/dLを超えないようになっています。
通常食事をすると、30分後に血糖値は最高値になり、そこからインスリンの働きによって、徐々に下がってき120分後には元の血糖値に戻ります。しかし、高血糖の状態が続いていたためにすい臓が疲弊してしまっている人では、インスリンの分泌が遅れてしまうために血糖値の上昇を抑えることができず、200mg/dLを超えてしまいます。
高血糖状態になってしまうと、すい臓はどんどんインスリンを出そうとして頑張ってしまい、その結果、疲弊していってしまいます。すい臓が疲れ切ってしまうと、インスリンをほとんど出さなくなってしまうのです。
たとえて言うならば、食後の血糖値の上昇のスピードが速い場合、すい臓は100m 走のように全力でインスリンを出し続けなければいけません。そのためすぐに疲弊してしまいます。一方、糖質の吸収を抑制するサプリメントを摂取しておけば、食後の血糖値の上がるスピードが緩やかになるため、すい臓は軽いジョギング程度の頑張りで、インスリンを出せば大丈夫なことになります。そのため疲弊しません。
このようにサプリメントを摂ることで、すい臓の負担を減らしてあげれば、多少、疲れていたすい臓も徐々に回復していきます。つまり、すい臓の機能が、完全に疲弊していない糖尿病予備軍の方は、糖質の吸収を穏やかにするサプリを摂取してすい臓を休ませることで、健康な体に戻ることが可能です。
理由②:糖質の燃焼を促すタイプのサプリでは太ってしまう
2つ目の理由は、糖質の燃焼を促すタイプのサプリメントを飲んでしまうと太ってしまうからです。
50歳を超えると、ほとんどの人の基礎代謝が急速に下がっていきます。基礎代謝は10代で最大ですが、男女ともに50歳をすぎるとどんどん下降線をたどります。
実は人間が一日の消費する総合エネルギー量の60%は基礎代謝によるもの(基礎代謝量)です。運動などによって消費されるエネルギー(身体活動量)は30%ほどです。つまり、基礎代謝を高めることが糖質を消費させるために最も大切です。
基礎代謝量とは「生命を維持するために必要最低限のエネルギーのこと」です。具体的には、体温を保ったり、内臓を動かしたりするのに使われるエネルギーです。そして基礎代謝量は、筋肉の量に比例していますので、年齢とともに筋肉量の落ちた50歳以上の方では、基礎代謝量も下がっています。
糖質の燃焼を促すタイプのサプリメントでは、糖質の吸収を阻害しません。そのため細胞内に糖質が吸収されてしまいます。若い方で吸収された糖質がどんどん燃焼されれば問題はないのですが、50歳以上の方ではすべて燃焼させることはできず、過剰に吸収されてしまった糖質が細胞内で脂肪として蓄えられてしまいます。その結果太ってしまいます。
太って脂肪細胞が増えてしまうと、同じインスリンの量が分泌されても効き目が悪くなっていき、ますます高血糖となっていく悪循環に陥ってしまいます。
このように、本来細胞内に糖質を吸収させ燃焼させていくのが目的の燃焼系のサプリメントも、適していない人が使ってしまうと症状を悪化させてしまいます。
糖質の吸収を穏やかにするタイプでかつ、ビタミンやミネラルが豊富なものがお勧め
さらに50歳以上の糖尿病予備軍の方は、糖質の吸収を穏やかにする成分だけではなく、ビタミンやミネラルなどが含まれているサプリメントをお勧めします。では、なぜ糖質の吸収を穏やかにする成分だけのサプリメントではいけないのでしょうか?
食事制限だけの血糖コントロールを行なうと、短期的には血糖値が下がります。しかし長期的な目で見ると、食事の量を減らすということは、糖質以外のビタミンやミネラル、タンパク質など、体内の化学反応を潤滑に進める栄養素や、筋肉を作るための材料となる栄養素が不足してしまいます。
前述したように基礎代謝量は、筋肉の量に比例しますので、摂取するたんぱく質が足りなくなってしまうと、筋肉を作る材料がなくなってしまい、筋肉の量が少なくなっていってしまうのです。さらに摂取する食材の種類が減ると、ビタミンやミネラルなどを摂取する種類も減ってしまい、体の中で起こっている化学反応がうまく進まなくなってしまいます。その結果代謝も落ちていってしまうのです。
50歳上の方が、普段の食事から一日に必要なビタミンやミネラル、タンパク質などを十分に摂取するためには、かなりの量の食事を取らなければならなくなり、結果カロリーを取り過ぎることとなり太ってしまいます。
私の薬局にも60代の女性の方で、糖尿病予備軍の方が血糖値を気にしてカロリーを減らそうとし、脂っこいものを避け、かけそばばかり食べていた方がいました。食事の量を減らしたので、初めは体重も減っていきましたが、徐々に体の筋肉量が減ってしまい、基礎代謝量が減ったせいか、リバウンドで太ってしまいました。
50歳以上の糖尿病予備軍の方は、糖質の吸収を穏やかにする成分だけではなく、ビタミンやミネラルなどの栄養素も多く含んでいるサプリメントを選ぶことが大切です。
糖尿病予備軍になったら、今すぐサプリを飲み始めてください
私は薬局で働いていて、患者さんから「糖尿病ではないので、まだサプリメントを飲み始めなくてもいいよね?」と質問されます。そのような時、私は「今すぐ飲み始めましょう」とお答えしています。なぜならば理由が2つあります。
理由①:いったん糖尿病になると治らないから
先程も述べましたが、糖尿病はいったんなってしまうと治すことができない病気です。そのため血糖値が、糖尿病の基準値を超える前に対策をしなければいけません。糖尿病の基準値は空腹時血糖値で126mg/dL、HbA1cで6.5%です。
糖尿病の基準値を超えてしまうほど症状が進行してしまうと、すい臓はすでに疲弊してしまっています。
私の薬局の患者さんでも、健康診断で糖尿病予備軍だった方が、糖質の吸収を穏やかにする系のサプリメントで、正常値に戻すことができた方がいらっしゃいます。この方も50歳を過ぎてから、初めて血糖値が高くなりだし、すぐにサプリメントを飲み始めて血糖値をコントロールすることができました。
理由②:過去に高血糖の時期があると糖尿病の合併症を発症する可能性があることがわかっているから
2つ目の理由は、10年前に血糖値が高かった時期のあった人は、その後血糖値を基準値内にコントロールできていたとしても、糖尿病の合併症を発症してしまう可能性があることが、大規模臨床試験でわかっているからです。
糖尿病自体は、何にも自覚症状のない病気です。しかし糖尿病の怖い理由は、網膜症、腎症、末梢神経障害、心筋梗塞、脳卒中などの合併症を引き起こすことです。
アメリカで1983年から2013年まで30年間にわたって行われた大規模な臨床試験があります。その研究結果から、血糖値の高い時期があると、10数年経ってから合併症が進行してくることがわかったのです。その原因は血糖値が高い時期に体内でできてしまうAGE(終末糖化産物)という糖分がタンパク質とくっついてできる物質です。
AGEは一度できるとなくなりません。AGEが糖尿病の合併症の原因であることが最近わかってきています。つまり何十年も前に、血糖値の高い時期があるとAGEができてしまい、その後一生懸命血糖値をコントロールしても、何十年も経った後、糖尿病の合併症を発症してしまいます。
このような理由から、血糖値が高めになってきたら、基準値を超える前にサプリメントで血糖値のコントロールを始める事が非常に大切です。
以上のように50代60代の方で、初めて血糖値が上がってきてしまい糖尿病予備軍になってしまった方は、できるだけ早く「糖質の吸収を穏やかにするタイプで、かつビタミンやミネラルの豊富なサプリメント」を飲み始めて下さい。