薬剤師である私は、「健康診断で血糖値が高めだったのだけど、どうしたらいいかな?」と患者さんからよく聞かれます。
血糖値が高いと診断された人は、「血糖値が上がってきたが、大丈夫かな?」「とりあえず何をすればいいのかな?」 とたくさんの不安を感じています。
そのような人に対して、私は「食事の炭水化物を減らすこと」「食後に有酸素運動をすること」「サプリメントを活用すること」の3つを、すぐに開始するようアドバイスしています。
なぜ、今すぐ3つの対策を始めなければいけないのかと言うと、血糖値が糖尿病の基準値を超えてからでは、手遅れになるからです。
このページでは今すぐ対策を始めなければいけない理由と、食事、運動、サプリメントの3つについて詳しく説明していきます。
なぜ早期から対処しなければいけないのか?
健康診断で「糖尿病予備軍(境界型)」に当てはまってしまったら、すぐに対策を打たなければいけません。
ちなみに糖尿病予備軍(境界型)とは、空腹時血糖値が110~126mg/dLの範囲内のことをいいます。空腹時血糖値は、ほとんどの健康診断で測定される項目です。
空腹時血糖値が126mg/dL以上になってしまうと「糖尿病型」と言われ、再検査が必要になります。
「糖尿病予備軍」のうちに対策を打たなければいけない理由は、2つあります。
1つ目の理由は、一度糖尿病になってしまうと治らないからです。
高血糖の状態が続くと、血糖値を下げようとして、すい臓がインスリンというホルモンを一生懸命に分泌します。その結果、すい臓が疲れ果ててしまい、インスリンの分泌が少なくなったり、インスリンの機能が低下したりします。この状態を「すい不全」と言います。
糖尿病と診断された時には、すい不全になっています。一度すい不全になると残念ながら、すい臓の機能が回復することはありません。つまり糖尿病は治らないのです。
そのため、糖尿病予備軍の時点で対策を打ち、糖尿病にならないように予防しなければいけません。
2つ目の理由は、10年前に血糖値が悪かった人は、今現在血糖値が正常範囲内にあっても、合併症を発症してしまうことが科学的に分かっているからです。
糖尿病になってから、一生懸命に薬や運動、食事制限をして血糖値を低く抑えても、10年前に高血糖の時期があると合併症を発症してしまう可能性があるのです。
このことは、2013年にアメリカで発表された「DCCT/EDIC Syudy」という研究で証明されました。これは、アメリカが国を挙げて30年間にわたって実施したものです。
研究の結果、最初の6年間、血糖コントロールをしないグループに入っていた人たちは、その後10年間血糖管理をしっかり行っても、最初から血糖コントロールをしていたグループの人たちに比べて、合併症の発生率が高いというデータが出たのです。
その原因は、合併症のリスクとなる「AGE(終末糖化産物)」という物質が一度できてしまうと消えないからです。
AGEとは血中に吸収された糖分とタンパク質がくっついて作られる物質です。血管を作っている成分であるコラーゲンなどにAGEができてしまうと、血管の弾力性が失われていきます。一度できたAGEは消えないため、10年間という時間をかけて合併症が発症してしまうのです。
このように、健康診断で空腹時血糖値が110mg/dLを越えてしまったら、すぐに対策を取らなければいけません。
それでは、具体的にどのような対策をとればよいのか、説明していきます。
対策1:食事の炭水化物を減らす
対策の1つ目は、食事の炭水化物を減らすことです。炭水化物とは、ご飯やパン、麺類などの主食と、甘いものです。消化されて最終的にブドウ糖になるものが炭水化物なのです。
なぜ食事の量を減らすのではなく、炭水化物だけを減らす事をすすめるのかというと、血糖値を上げるのは炭水化物だけだからです。
栄養学的に「三大栄養素」と呼ばれるものがあります。三大栄養素は炭水化物、タンパク質、脂質の3つですが、この中で血糖値を上げるのは炭水化物だけなのです。タンパク質と脂質は血糖値を上げません。
この事実は、知っている人が意外と少ないです。
私のところに来る患者の中にも、血糖値が下がらなくて困っている方がいました。どのようなものを食べているのかを聞いてみたところ、脂っこいものを避ければ良いと考えて、「かけそば」ばかり食べていたそうです。
つまり、この患者さんは炭水化物だけを食べていました。糖尿病なのに、血糖値を上げてしまうものだけをひたすら食べていたのです。
この例のように、正しい知識を持たないために無駄な努力をしてしまうケースが多々あります。
炭水化物を減らす食生活では、炭水化物ではない肉や魚、乳製品などはカロリーを気にせず食べることがでそのため、きます。空腹に耐える必要がありません。非常に継続しやすく、かつ効果的な方法です。
対策2:食後の有酸素運動
対策の2つ目は、食後の有酸素運動です。酸素をたくさん体内に取り入れる運動することで、ブドウ糖や脂肪を効率的に消費することができます。具体的には、ウォーキング、ジョギング、水泳、自転車などが挙げられます。
ポイントは、継続できるように相手がいなくても1人でできる運動を選ぶことです。
運動を行うと筋肉でブドウ糖が使われます。筋肉はブドウ糖を消費すると、血液中からブドウ糖を取り込みます。それにより、血糖値を下げることができるのです。
健康な人でも、食事をすると血糖値が上がり始め、食後1~2時間後に最も高くなります。そのため、食後の高血糖を防ぐために、食後1~2時間後に運動をすることが最も効果的なのです。
また運動には、ブドウ糖を消費するだけではなく、インスリン受容体の働きが良くなり、インスリンの効きが良くなる効果もあります。これは、同じ量のインスリンしか分泌されなくても、インスリンの効果が高くなることを意味します。
さらに運動することで筋肉の量が増えるため、基礎代謝が高まります。そのため、太りにくい体質になります。肥満は糖尿病を発症する原因の一つなので、運動により肥満を解消することが、糖尿病の予防に効果的です。
実際にブドウ糖を摂取後、1時間後の血糖値が250mg/dLを超えていたグループに、1年間有酸素運動をしてもらった結果、1時間後の血糖値が150mg/dL以下に下がったというデータがあります。
〈グラフ〉
有酸素運動は、継続することが非常に大切です。できれば毎日、少なくても週に3日間以上、1回30分以上行ってください。
対策3:サプリメントを活用する
対策の3つ目はサプリメントを使用することです。私がサプリメントをおすすめするのには3つの理由があります。
理由1:食事療法・運動は続かないから
1つ目は、食事や運動に気をつけることが大切だとわかっていても、継続することは難しいからです。誰もが食事に気をつけることや運動をすることが、糖尿病予防に効果的であることはわかっています。しかし、行動に移すことは容易ではありません。
一方サプリメントは、毎日飲むだけですので、続けることが容易です。食事療法や運動を続けながら、サプリメントでフォローすることで、食事療法や運動も続けることができるようになります。
実際、私のところに来る患者の中にも、食事療法や運動療法を継続できない方がいました。しかしサプリメントを活用することにより、食事療法・運動・サプリメントのいずれかを毎日続けることができているという自信がつき、その結果、食事療法・運動も継続することができるようになった方がいます。
理由2:糖尿病にならないと薬は出してもらえないから
2つ目は、糖尿病にならないと糖尿病の薬を処方してもらえないからです。
病院を受診しても、糖尿病の診断を下されないと糖尿病の薬を出してもらうことはできません。しかし一度糖尿病になってしまえば、糖尿病を治すことはできません。血糖値が高くなり糖尿病と診断されるまで待っていたのでは手遅れになってしまいます。
ですから、糖尿病予備軍の段階でサプリメントなどを活用し、血糖値をコントロールすることが非常に大切になります。
理由3:サプリメントの信頼性が高まってきたから
3つ目は、信頼性の高いサプリメントが発売されているからです。
糖尿病と診断されないと処方してもらえなかった薬に近い作用のあるサプリメントが発売されています。誰もが知っているような大手の会社から発売されているサプリメントも多く、その作用のデータも公開されるようになっています。
国も医療費削減のため、病気でない人に保険を使って薬を出すことを厳しく取り締まっていく方向にあります。自分の健康は自分で何とかするようにとの方針です。
先にも述べたように、糖尿病は一度なってしまうと治らない病気です。糖尿病と診断されて薬を処方してもらう前に、自分でサプリメントを活用し予防していくことが非常に大切です。
ここまで述べてきたように、健康診断で空腹時血糖値が110mg/dLを超え、糖尿病予備軍になってしまったら、食事の炭水化物を減らし、週3日以上の有酸素運動をし、自分に適したサプリメントでフォローするようにしましょう。